【2022年版】自治会等の現状と課題

自治会(解説)

いま、全国の自治会はどんな状況で、どんな課題があるのでしょうか。
高齢化やコロナの影響で世の中を取り巻く環境が大きく変わっているため、最新の情報を調べました。

地域コミュニティに関する研究会報告書

総務省ウェブサイトに掲載されている「地域コミュニティに関する研究会報告書」(2022年4月)が非常に参考になりましたのでご紹介します。

この資料は、全国の自治会等からアンケートで集められたリアルな声が多く含まれています。
担い手の高齢化やコロナによる影響など、自治会等が抱える課題や不安が多くの面からまとめられています。
また、自治会等や市区町村が今後どのように協力しながら地域を守っていくべきかの提言も示されています。
これから自治会活動に取り組む方にとって大いに参考になる資料です。

56ページと非常にボリュームの多い文書ですので、以下に内容をまとめました。

地域コミュニティに関する現状と課題

自治会は地域住民の交流や情報共有、防災活動などに大きな役割を果たしています。しかし、以下のような課題も発生しています。

  • 加入率の低下
  • 役員・運営の担い手不足、役員の高齢化

加入率の低下

自治会等への加入率の平均は、2010年に全国で78.0%でしたが、2020年では71.7%に低下しています。また、人口が多い都市ほど加入率が低い傾向があります。

人口50万人以上の都市:約60%、人口1万人未満の都市:約 90%

未加入者の増加には、各都市における住民の流動性やライフスタイルの影響に加え、次の要因が考えられます。

  • 自治会等の活動の認知度・魅力度が不足していること
  • 組織運営が閉鎖的・排他的・硬直的であること
  • 役員の負担が重いため、加入への抵抗感が生じていること

役員の高齢化

役員の高齢化も進んでいます。地域によって異なりますが、役員の多くは60代以上、自治会長の多くが70代から80代となっています。また、役員が高齢化・固定化している例も見られます。

加入率の低下や役員の高齢化・固定化が悪循環を生み、加入者の減少や活動の担い手の不足に繋がります。その結果、組織活動が硬直化し、地域の課題に対する対応能力が弱まることが懸念されています。

地域活動のデジタル化

デジタル化の状況

情報発信に電子メールやホームページ、LINE 等を活用している自治会等が各10%程度見られる一方で、全体の約75%の自治会等は従来の紙媒体での回覧板等での情報共有のみ行っています。

デジタル化の障壁としては、主に以下の点が挙げられています。

  • 住民がITに不慣れ
  • 導入費用が不安
  • 導入を担える人材が不足している

ただ、コロナ禍をきっかけとした社会全体のデジタル化が進む中で、情報共有の効率化や新たなサービス・価値を生み出す方法として、デジタル化に注目が集まっています。
地域活動のデジタル化を進めることで、次のようなメリットが期待されます。

  • 情報共有の効率化・迅速化
  • 活動の見える化を通じた住民の参加促進
  • 新たなサービス・価値の創出(高齢者・被災住民などのリアルタイムでの安否確認など)

デジタル化推進のためには、現役世代や若者の積極的な参加を促しつつ、行政とともに積極的な取り組みが有効です。

デジタル化する際の注意点

地域活動のデジタル化を進めるべきか、どのような形で進めるかは、各自治会等の自主的・主体的な判断が必要です。また、デジタル化で全てが解決するわけではなく、デジタルとリアルの活動のバランスをどう取るか、十分検討する必要があります。

さらに、デジタル化に際しては個人情報保護にも注意が必要です。
自治会等にも個人情報保護法が適用されるため、個人情報を収集する際には利用目的を明示すること、個人情報の漏洩防止のための対策を講じるこが必要です。

自治会等の活動の持続可能性の向上

大規模災害時等の緊急時における共助・互助の存在として、自治会等の果たす役割は大きいと言われていますが、自治会等の役員・運営の担い手不足、加入率の低下等により、活動の縮小・停滞に陥るリスクが高まっています。その要因として、自治会等の活動や運営方法が今の時代にマッチしていないこと、魅力的な活動と捉えられないことが挙げられます。

自治会等に加入しない理由

自治会等に加入しない理由としては以下のような声が多く聞かれます。

  • 参加時間が取れない
  • 活動内容が不明
  • 加入のメリットが分からない
  • 役が負担
  • 会費が負担

加入率を向上させるには、ニーズに即した具体的な取り組みを行うことが必要です。
例えば、加入案内を作成する際は、活動の内容や収支、加入のメリット、加入者に求められる役割等を丁寧に伝える必要があります。また、地域の実情に応じ、学生向けパンフレットや不動産業界との協定、アドバイザーの活用などの手法を組み合わせることが有効です。

また、地域コミュニティに対するニーズは時代とともに変化しています。これまでの自治会等の活動に加え、防災・危機管理や地域福祉に関する活動への期待が高まっています

これまでの自治会等の主な活動

  • 地域の催事・イベント
  • 環境(清掃、美化、環境保全など)
  • 行政からの連絡事項の伝達
  • 住民相互の連絡

今後期待される活動

  • 防災・危機管理
    (要
    援護者の避難支援、安否確認など)
  • 地域福祉

また、活動の持続可能性を向上させるためには、自治会等の自己改革も必要ですが、市区町村による支援も必要です。

  • 加入促進の支援
  • 市区町村としてのデジタル化の取り組み
  • 市区町村からの依頼業務の整理による自治会等の負担軽減 など

地域コミュニティの様々な主体間の連携

それぞれの地域では、自治会等に限らず様々な団体が目的に応じて活動しています(NPO、企業、学校、各種団体、専門家など)。

かって自治会等はこれら団体や市区町村の下請け的な位置付けとして、依頼に応じて様々な活動を引き受けてきました。
しかし、価値観やライフスタイルの変化に伴い、自治会側の負担感の増大や、団体間でのすれ違いが発生しています。

地域コミュニティの様々な主体が適切に連携するには、市区町村が各団体の目的・活動を「見える化」し、お互いの連携を支援する必要があります。
また、協力依頼する側の団体は、活動や収支を明確に説明することがスムーズな連携を維持するうえで重要となります。

まとめ

自治会等は、多くの地域でコミュニティの中心的な存在ですが、課題も抱えています。

  • 地域活動におけるデジタル化の必要性
  • 加入率低下・担い手不足等による活動の持続可能性の低下
  • NPO等との連携の必要性

これらの課題を生じさせる原因は複合的で、地域ごとに状況は異なります。

課題を解決するために、自治会等は時代やニーズに即した具体的な取り組みを行うことが必要です。

  • 現役世代や若者の積極的な参加を促し、地域活動のデジタル化に積極的に取り組む
  • 活動内容・収支、加入のメリット、加入者に求められる役割等を丁寧に伝える
  • 団体間での健全なコミュニケーション、各団体の情報の「見える化」を進める

また、市区町村にも、多様な住民が継続的に活動に関わるための仕組みづくりや、人材、資金、ノウハウ等の確保に向けた積極的な支援活動が求められます

参考文献

地域コミュニティに関する研究会報告書(総務省ウェブサイト)

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